新選組の近藤勇といえば、愛刀の「虎徹(こてつ)」を思い浮かべる方もいますよね。
ところが、この刀には「本当は偽物だったのでは?」という話があるんです。
命を預ける刀なのに、そんなことがあるのでしょうか。
今回は、近藤自身が残した手紙を入口に、虎徹にまつわる逸話を見ていきましょう。
目次
そもそも虎徹って、どんな刀?
虎徹は、もともとは刀を作った職人の名前です。江戸時代前期に活躍した「長曽祢虎徹(ながそねこてつ)」が作った刀を、虎徹と呼んでいるんですね。
この人、初めから刀鍛冶だったわけではありません。もとは甲冑(かっちゅう)、つまり鎧や兜を作る職人で、50歳前後で江戸に出て刀作りに転じたとされています。
切れ味だけでなく、刀の表面に見える鍛え肌や、数珠の玉を連ねたような刃文「数珠刃(じゅずば)」なども評価された名工です。武器としての頼もしさと、眺める楽しさ。その両方を備えた刀だったんですね。[1]

池田屋事件のあと、近藤が手紙に書いたこと
近藤と虎徹の関係を知る手がかりが、池田屋事件のあとに書かれた手紙です。
近藤は、仲間の刀が傷んだことを伝える一方で、自分の刀については、現代の言葉にすると「私の刀は名剣の虎徹だからでしょうか、無事でした」という趣旨のことを書いています。[2]
戦いの報告の中に、わざわざ愛刀の名前が出てくる。
そこには、無事に戦いを終えられた安堵と、刀への信頼がにじんでいるように感じられますよね。
ただ、この手紙は刀の鑑定書ではありません。近藤が自分の刀を「虎徹」と呼んでいたことは分かっても、それだけで作者まで確定するわけではないんです。
「実は偽物だった」という話もあるけれど
近藤の虎徹には、別の刀工の作品に虎徹の名前を刻んだものだった、という話があります。
よく知られるのは、幕末の名工・源清麿(みなもとのきよまろ)の刀に、偽の銘を入れたという説です。銘(めい)というのは、刀の柄に収まる部分などに刻まれた、作者の名前などのことですね。
けれども、この逸話を紹介する刀剣書でも、話を実証する資料がないことが指摘されています。無銘の刀を近藤が虎徹と見ていたという別の話もあり、伝わり方は一つではありません。[3]
「実は偽物でした」と言い切ると意外性はありますけれど、ここは「そういう説もある」と受け止めたいところです。
本物かどうかと、信頼していたかは別の話
近藤の虎徹は、本当に虎徹が作った刀だったのでしょうか。
今回確認した資料からは、その答えを断定できません。
それでも、近藤自身が手紙に刀の名を記していることは、この一振りを考えるうえで大切な手がかりです。
どんな刀だったのかと想像しながら、その刀を頼みにしていた人の言葉も読む。日本刀には、そんな楽しみ方もあるんですね。
次に「近藤勇の虎徹」という名前を見かけたら、華やかな逸話と一緒に、手紙に残る愛刀への信頼も思い出してみてくださいね。
参考資料
[1]文化遺産データベース「薙刀 銘 長曽祢興里入道乕徹/延宝四年三月吉祥日」 — 刀工・虎徹の経歴と作風。掲載作品は近藤勇の愛刀ではありません。
[2]東京市町村自治調査会「第7回 日記にみる人々のくらし―幕末維新の動乱を背景に―」 — 小島資料館館長・小島政孝氏による近藤勇書簡の解説。本文の手紙部分は趣旨の現代語による要約です。
[3]「日本刀・近藤勇の虎徹」(『日本刀名工伝』より、と記載された転載) — 偽物説などの伝承と、その実証上の限界を確認するために参照。会話や細部の描写を史実として採用していません。
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