「順逆無二門」明智光秀の辞世の句に込められたものとは?

こはくです。本能寺の変で織田信長を討った明智光秀。そんな光秀の辞世の句って興味あります。

主君を討った武将が最期に何を思ったのでしょう。光秀は、辞世の句にどのような思いを込めたのでしょう。

明智光秀の辞世として伝わる漢詩

順逆無二門
大道徹心源
五十五年夢
覚来帰一元

読み下しの一例
順逆 二門に無し
大道 心源に徹す
五十五年の夢
覚め来れば 一元に帰す

これが、明智光秀の辞世の句として伝わっています。少し難しい言葉です。この詩は、江戸時代の『明智軍記』などに登場します。

順逆二門に無しとはどういう意味

「順逆」は、物事が思いどおりに進む順境と、困難に出会う逆境として読むことができます。西教寺の句碑の解説も、仏教の修行における順縁と逆縁を挙げ、二つに見えるものも根本では一つだと説明しています。

そう読むと、「順境であっても逆境であっても、根本に至る道は別々ではない」という意味になります。良いことも悪いことも含めて、一つの人生だったと受け止めるような言葉ですね。

一方、光秀が信長を討った経緯と重ねれば、「主君に従うことと背くこと」にも読めます。日本芸術文化振興会の解説では、こちらの読み方が紹介されています。

ただし、そこから「光秀は自分の謀反が正しいと主張した」とまで決めつけるのは慎重でありたいところです。言葉の解釈と、実際に光秀が考えていたことは、分けて考える必要があります。

大道心源に徹すとはどういう意味

「大道」は、人が歩むべき大きな道や、根本となる道理。「心源」は、心の奥深くにある源を表す言葉です。

この一節は、「根本の道理は、心の源にまで通じている」といった意味に読むことができます。周囲からどう評価されるかということより、もっと深いところにある道理を見つめる言葉として受け取れそうです。

この言葉には、善悪や成功と失敗を簡単に分けられない人生を、心の奥から見つめ直すようにも感じます。

五十五年の夢と一元に帰す

「五十五年の夢」は、五十五年の人生を夢にたとえた表現です。「覚め来れば一元に帰す」は、その夢から覚めれば、すべてのものの根源に帰っていく、といった意味になります。

栄光も苦難も、長い夢の中の出来事だった。その夢が終わるとき、人は根源へ帰る。ここには、人生のはかなさを見つめる響きがあります。

なお、この詩に「五十五年」とありますが、実は光秀が何歳で生涯を閉じたかはっきりとわかっておらず、この辞世の句も本当に光秀が残したものなのか定かではありません。

本当に光秀が残した辞世なのか

辞世とは、死に臨んで残す詩歌のことです。ただし、歴史上の人物の辞世には、後世の物語を通して広まったものもあります。

この漢詩について、日本芸術文化振興会は後世の創作とする見方を紹介しています。レファレンス協同データベースでも、『新名将言行録』に後世の偽作であろうとの記述があることを確認できます。

そのため、「光秀の辞世として伝わる漢詩」と紹介しています。

本人の言葉と確かめられなくても、この詩が光秀の最期に重ねられてきたことには、意味があるかもしれません。後世の人々が光秀をどのような人物として描いてきたのかを知る、手がかりになるからです。

辞世から本能寺の変の理由はわかるのか

光秀が信長を討ったのは、天正十年(一五八二)六月二日。その後、六月十三日の山崎の戦いで羽柴秀吉に敗れました。小栗栖で落命したと伝わり、最期の詳しい経緯には伝承が含まれます。日付は当時の暦です。

この劇的な最期と辞世を重ねると、光秀の本心に近づけたような気がします。しかし、本人の作かどうか確かめられない詩で、本当の、本能寺の変の動機を断定することはできません。

「順逆」という言葉が意味深に聞こえますが、「根本の道理」とは何か、「一元に帰す」とはどういうことか、読み手によって受け取り方もちがうでしょう。だからこそ歴史の事実と、後世の物語や私たちの解釈を分けて読むことが大切ですね。

まとめ

「順逆二門に無し」で始まる漢詩は、順境と逆境、あるいは主君への服従と反逆を超えて、人生の根本を見つめる言葉として読むことができます。

ただし、光秀本人の辞世と断定できるものではありません。

こはくは、誰が詠んだかという問題とともに、なぜこの言葉が光秀の最期に重ねられてきたのかにも興味があります。辞世を通して見えてくるのは、光秀の本心そのものというより、後世の人々が思い描いた光秀の姿なのかもしれません。

参考資料

日本芸術文化振興会 文化デジタルライブラリー 光秀の最期

レファレンス協同データベース 明智光秀の辞世の句を知りたい

K’sBookshelf 西教寺の辞世句碑と解説板の紹介

Japanese Wiki Corpus 明智光秀

手を振って挨拶する白狐のこはく

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