【日本刀の小話】刀の「波模様」は飾りなの?刃文に残る刀工の技

日本刀の写真を見ていると、刃の近くに白っぽい波のような模様が見えることがありますよね。

あれは刀をきれいに見せるために描いた飾りなのでしょうか。

実は、あの模様は「刃文(はもん)」といいます。刀を作るうえで大切な「焼入れ(やきいれ)」から生まれるんです。

今回は、刃文ができる理由と、展示での楽しみ方をご紹介します。

刃文は刀に描いた線ではない

刀工は刀身を熱したあと、水などで急に冷やす「焼入れ」をします。刃を硬くするための工程ですね。

焼入れの前には、刀身に土を塗ります。刃の側は薄く、ほかの部分は厚く塗ることで、冷える速さに差をつけるのです。

急に冷える刃の側は硬くなり、厚い土で覆われた部分は比較的ゆっくり冷えて、柔軟さを保ちます。その違いが刀身の表面に現れたものが刃文です。

つまり、あとから絵の具で描いた波ではありません。刀を焼き入れた結果が、模様として見えているんですね。

どうして波の形になるの?

刃文というと波形を思い浮かべますが、実はまっすぐに近いものもあります。

直線的な刃文は「直刃(すぐは)」、曲線的なものは「乱刃(みだれば)」と呼ばれます。

乱刃の中でも、ゆったりと波打つ「湾れ(のたれ)」や、半円・山形が繰り返す「互の目(ぐのめ)」など、形はいろいろ。刀工が焼入れの土をどう塗るかによって、刃文の形にも違いが生まれます。

「波模様」とひとくくりにしていたものを見比べると、それぞれの刀の個性が見えてきますよ。

実用から生まれて、美しさにもなった

焼入れは、刃の硬さと刀身の柔軟さに関わる大切な工程です。京都国立博物館は、刃文を焼入れによる金属組織の変化から生まれる模様と説明しています。

一方で、刀工が刃文の見え方を意識してきたことも、東京国立博物館は紹介しています。刀の働きに関わる工程から生まれた模様が、鑑賞の見どころにもなったわけです。

ただ、「波が細かいほどよく切れる」といった具合に、刃文の形だけで切れ味を決めることはできません。まずは形そのものを楽しむのがよさそうですね。

展示で見るなら、どこに注目する?

次に日本刀を見るときは、刃先に沿って現れる白っぽい模様を探してみてください。

まっすぐなのか、ゆったり波打つのか、細かな山が続くのか。説明札に「直刃」「湾れ」「互の目」などとあれば、実物の模様と見比べてみましょう。

写真では分かりにくい刃文もあります。東京国立博物館も、目を凝らして見ると刃文が見えてくると紹介しています。見えないときは、少し立ち位置を変えて、光の当たり方を確かめると楽しいですよ。

一本の刀に残る焼入れの跡をたどると、ただ美しいだけでなく、その姿を生んだ刀工の仕事まで想像できますね。

参考資料

京都国立博物館「縁を結ぶかたな―国宝・重要文化財で学ぶ刀剣鑑賞―」

京都国立博物館「日本刀 鑑賞ポイント」

東京国立博物館「『至宝とボストンと私』 #3 刀剣」

メトロポリタン美術館「The Japanese Blade: Technology and Manufacture」

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